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銘柄
「宇治茶」と書いてあれば京都府産だけ、とは限りません。銘柄の名前が何を保証しているかは、後ろ盾の制度によって違います。地理的表示(GI)、地域団体商標、産地団体の定義、業界の表示基準のみ、と制度の種類で分けました。強弱の順位ではありません。
地理的表示(GI)に登録されている銘柄
農林水産省の登録簿に載る、法律に基づく制度です。登録番号と登録年月日で確かめられます。何が要件かは、産品ごとの登録明細書に書かれています。
八女伝統本玉露やめでんとうほんぎょくろ地理的表示(GI)
- どういう名前か
- 茶で最初に地理的表示(GI)に登録された銘柄です。八女茶一般ではなく、伝統的な作り方に限った名前です。
- 名乗る条件
- 農林水産省の登録簿に登録番号第5号、2015年(平成27年)12月22日で載っています。GIは法律に基づく制度で、登録された名称は登録明細書の基準を満たすものだけが名乗れます。何が要件かは、産品ごとの登録明細書に書かれています。
- 味の見当
- 覆い香が濃く出る玉露です。少量の湯で低温からゆっくり淹れる飲み方が前提になります。
深蒸し菊川茶ふかむしきくがわちゃ地理的表示(GI)
- どういう名前か
- 静岡県菊川市の深蒸し煎茶で、地理的表示に登録されています。深蒸しという製法が名前に入っている点が珍しい銘柄です。
- 名乗る条件
- 登録番号第130号、2023年(令和5年)3月31日の登録です。産地と製法のどちらも名前に入っていますが、実際の要件は登録明細書によります。
- 味の見当
- 深蒸しなので水色は濃く、やや濁ります。渋みは穏やかに出ます。
日本茶にほんちゃ地理的表示(GI)
- どういう名前か
- 2026年7月に「日本茶」そのものが地理的表示に登録されました。個別の産地銘柄ではなく、国全体を範囲とする登録です。
- 名乗る条件
- 登録番号第179号、2026年(令和8年)7月10日の登録です。個別の産地ではなく国全体を範囲とする点が、他のGI登録と違います。何が要件になるかは登録明細書によります。
- 味の見当
- 味の指標として使える名前ではありません。個別の産地や製法を絞り込むものではないためです。
地域団体商標に登録されている銘柄
特許庁に登録される商標で、GIとは別の法制度です。名前を独占的に使えるようにするもので、産品の基準を定める仕組みではありません。
西尾の抹茶にしおのまっちゃ地域団体商標
- どういう名前か
- 愛知県西尾市の抹茶です。碾茶の産地として大きく、菓子や飲料の原料としても広く使われています。
- 名乗る条件
- 地域団体商標として登録されています。地理的表示(GI)に登録されていると書かれた資料も見かけますが、農林水産省の登録産品一覧には載っていません(2026年8月に確認)。商標とGIは別の制度です。
- 味の見当
- 覆下栽培の碾茶を挽いた抹茶です。飲用のほか加工用も多く流通するので、用途に合わせて選んでください。
産地団体が定義を置いている銘柄
法律ではなく、産地の団体が決めた取り決めです。名前から想像する範囲と一致しないことがあります。
宇治茶うじちゃ産地団体の定義
- どういう名前か
- 京都を代表する銘柄です。名前から京都府産だけを想像しがちですが、定義はそうなっていません。
- 名乗る条件
- 京都府茶業会議所が2004年(平成16年)に定義を決めています。「宇治茶は、歴史・文化・地理・気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶としてともに発展してきた当該産地である京都・奈良・滋賀・三重の四府県産茶で、京都府内業者が府内で仕上げ加工したものである。ただし、京都府内産を優先するものとする。」つまり四府県の茶を京都府内で仕上げたものが宇治茶で、京都府産100%とは限りません。
- 味の見当
- 玉露と碾茶で知られる産地です。覆いをかけた茶が多く扱われるため、旨み寄りの味を紹介されることが多い銘柄です。
個別の後ろ盾を持たない銘柄
個別の後ろ盾はありません。日本茶業中央会「緑茶の表示基準」の産地銘柄ルールがかかり、産地産の荒茶100%のときだけ「○○茶」と名乗れます。なおこのルールは、GIや商標のある銘柄にも重なりえます。
知覧茶ちらんちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 鹿児島県南九州市の銘柄です。産地名(鹿児島)と銘柄名(知覧)が一致しない、数少ない例のひとつです。
- 名乗る条件
- 2007年に知覧町・川辺町・頴娃町が合併して南九州市が発足し、2017年4月に3つの銘柄が「知覧茶」に統一されました。市町村単位では全国最大の産地です。統一前の「川辺茶」「頴娃茶」の表記を見かけることもあります。それぞれ旧町の名前で、いずれも現在の南九州市にあたる地域です。
- 味の見当
- 深蒸しが多く、ゆたかみどりなど品種を明記した茶が手に入りやすい産地です。濃い水色と強い旨みで紹介されることが多い産地です。
静岡茶しずおかちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 生産量でも知名度でも代表的な銘柄ですが、県内で作り方が正反対に分かれるため、この名前だけでは味が絞れません。
- 名乗る条件
- 特別な定義はなく、日本茶業中央会「緑茶の表示基準」の産地銘柄ルールがかかります。静岡産の荒茶100%のときだけ「静岡茶」と名乗れ、50%以上100%未満はブレンドと分かる表記にして割合を添えます。50%未満では産地名を名乗れません。
- 味の見当
- 県内の地名まで見てください。川根・本山なら山間の浅蒸しで香り重視、掛川・牧之原なら深蒸しで濃い水色です。
狭山茶さやまちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 埼玉の銘柄です。産地としては北寄りで、生産量は大きくありません。仕上げの火入れを強めにかけることで知られます。
- 名乗る条件
- 産地団体の独自定義は置かれておらず、表示基準の産地銘柄ルールがかかります。
- 味の見当
- 「狭山火入れ」と呼ばれる強めの火入れで、香ばしさと濃い味に寄ります。渋みのある濃い一杯を好む方に向きます。
嬉野茶うれしのちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 佐賀の銘柄です。煎茶ではなく玉緑茶が主体で、茶葉の形からして違います。
- 名乗る条件
- 表示基準の産地銘柄ルールがかかります。玉緑茶であること自体は、同じ表示基準の名称定義によります。
- 味の見当
- 勾玉状に丸まった茶葉です。煎茶より口当たりが柔らかく、渋みが穏やかに出ます。
伊勢茶いせちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 三重の銘柄です。生産量は全国有数ですが、名前が表に出にくい産地とされてきました。
- 名乗る条件
- 表示基準の産地銘柄ルールがかかります。
- 味の見当
- 北勢はかぶせ茶が多く、旨み寄りです。南勢は深蒸し煎茶が中心で、同じ伊勢茶でも性格が分かれます。
そのぎ茶そのぎちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 長崎県東彼杵町を中心とする銘柄です。嬉野と同じく蒸し製玉緑茶が主体です。
- 名乗る条件
- 表示基準の産地銘柄ルールがかかります。
- 味の見当
- 丸まった茶葉で、口当たりは柔らかめです。急須の中で開くのに少し時間がかかります。
村上茶むらかみちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 新潟県村上市の銘柄です。商業的な茶園としては北限に近い産地として知られます。
- 名乗る条件
- 表示基準の産地銘柄ルールがかかります。
- 味の見当
- 寒い土地でゆっくり育つぶん、渋みが穏やかで甘みを感じやすいと説明されます。生産量が小さく、地元での消費が中心です。
加賀棒茶かがぼうちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 石川の銘柄です。産地名ではなく、茎を焙じるという作り方が名前になっています。
- 名乗る条件
- 産地銘柄というより製法の名前なので、表示基準の産地銘柄ルールとは性格が異なります。「棒茶」は茎茶を焙じたものを指します。
- 味の見当
- 浅く焙じるため水色は淡く、香りは強く立ちます。色の薄さは濃さの目安になりません。熱湯で短時間淹れるのが一般的です。
大和茶やまとちゃ業界の表示基準のみ
- どういう名前か
- 奈良の銘柄です。大和高原の高冷地で作られ、日本の茶の歴史が古い土地のひとつとされています。
- 名乗る条件
- 表示基準の産地銘柄ルールがかかります。
- 味の見当
- 高冷地で摘採が遅い産地です。煎茶とかぶせ茶が主体になります。
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