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よく聞く話
お茶の話には、言われてみればそうかもしれない、という程度で広まったものが混じっています。ここでは数字で決着がつくものを選び、確かめられた範囲だけを書きました。確かめられないものは「場合による」に置いています。
「玉露はやさしい味だからカフェインが少ない」
誤り- 実際は
- 逆で、日本茶のなかでは多いほうにあたります。日本食品標準成分表では、茶葉100gあたりのカフェインが玉露3.5g、せん茶2.3gです。浸出液でも玉露は100mLあたり0.16g、せん茶は0.02gと差が出ます。
- なぜそう言われるか
- 低温で淹れるので口当たりが丸く、刺激が少なく感じられるためです。ただし浸出液の8倍という差は、含有量だけの話ではありません。成分表の浸出条件は玉露が茶10gを60℃の湯60mLに2.5分、せん茶が茶10gを90℃の湯430mLに1分で、玉露はそもそも7倍濃く淹れています。カフェインを控えたいなら、茶種より「どれだけ濃く淹れるか」を見るほうが早道です。
「高級な茶ほどカテキンが多い」
誤り- 実際は
- 玉露のタンニン(カテキン類)は茶葉100gあたり10.0gで、せん茶の13.0gより少ないです。値段や格とカテキン量は、結びついていません。
- なぜそう言われるか
- 覆いをかけて日光を遮ると、カテキンの生成が抑えられ、テアニンなど旨み成分が葉に残りやすくなります。玉露が甘く感じるのは、このためです。つまり玉露は「カテキンを減らす方向」に作った茶なので、カテキンを摂りたいなら、日光を浴びた煎茶や番茶のほうが向きます。
「二煎目にはもう何も残っていない」
誤り- 実際は
- 残ります。一煎目で多くが出るのは確かですが、二煎目にも成分は出ます。むしろ茶葉がすでに開いているぶん、一煎目より速く出ます。
- なぜそう言われるか
- 一煎目が濃く感じられるので、そこで出尽くしたように思えます。実際には、二煎目を一煎目と同じ時間で淹れると渋くなりやすいです。二煎目は湯を熱めにして、時間をぐっと短くするとうまくいきます。
「水出しならカフェインは出ない」
誤り- 実際は
- 減りはしますが、ゼロにはなりません。カフェインは低温では溶け出しにくいだけで、時間をかければ出てきます。
- なぜそう言われるか
- 水出しは渋みが立たず飲みやすいので、刺激物が入っていないように感じられます。カフェインを避けたいなら、水出しにするより、もともとカフェインの少ない茎茶や、焙じた番茶を選ぶほうが確実です。
「濃くしたいなら長く待てばいい」
誤り- 実際は
- 長く待つと、濃さより先に渋みが増えます。濃さを変えたいときは、茶葉の量で調整できます。
- なぜそう言われるか
- 旨み成分は比較的早く溶け、渋みは後から効いてきます。「濃い」と「渋い」を同じものとして扱っているのが、この話のもとです。時間は茶種ごとの目安に合わせ、濃さは量で決めるのが確実です。
「抹茶とは緑茶を粉にしたもの」
誤り- 実際は
- 抹茶は、覆いをかけて育てた葉を揉まずに乾かした碾茶(てんちゃ)を挽いたものです。煎茶を挽いたものは粉末緑茶であって、抹茶ではありません。原料も栽培も違います。
- なぜそう言われるか
- 見た目がどちらも緑の粉なので、同じに見えます。原材料表示を見れば区別がつきます。菓子や飲料の「抹茶味」には、粉末緑茶が使われていることもあります。
「日本茶はすべて緑茶」
半分だけ本当- 実際は
- 大半はそうですが、例外があります。宮崎や熊本などで作られる釜炒り茶は、蒸さずに炒って作る緑茶です。和紅茶は完全に酸化発酵させた紅茶で、高知の碁石茶や徳島の阿波晩茶は、微生物による後発酵茶にあたります。
- なぜそう言われるか
- 流通量の圧倒的多数が蒸し製の緑茶なので、それ以外が視界に入りにくいのです。同じ茶樹から、止め方と発酵のさせ方で別の茶ができます。
「日本茶に熱湯を使ってはいけない」
場合による- 実際は
- 茶種によります。玉露やかぶせ茶、上級の煎茶は低めの湯でないと渋みが立ちますが、ほうじ茶・玄米茶・番茶はむしろ熱湯で淹れます。香ばしさは高温で立つためです。
- なぜそう言われるか
- 「日本茶=繊細=ぬるめ」という理解が広まったためです。湯の温度は茶種ごとに目安が異なり、7種それぞれの目安はトップの一覧に書いてあります。なお、ぬるい湯を使いたいときも、一度沸かしてから冷ますほうがよい結果になります。
「茶柱が立つと縁起がいい」
場合による- 実際は
- 言い伝えであって、味とは関係がありません。そもそも茎が混じっていないと立たないので、選別の精度が上がった現代の仕上げ茶では起きにくくなっています。茎茶なら立ちやすいです。
- なぜそう言われるか
- 茎が入るのは選別が粗い茶で、めったに起きないから吉兆とされた、という説明がよく見られます。由来を確かめる術はありませんが、「立ちにくい茶が普通になった」という事実のほうは確かめられます。
「新茶が一番おいしい」
場合による- 実際は
- 好みによります。新茶は香りが若く鮮やかですが、渋みと旨みの角がまだ取れていません。秋まで低温で寝かせた「蔵出し茶」を良しとする流儀もあり、こちらは味がまとまります。
- なぜそう言われるか
- 新茶は年に一度の話題性があり、価格も高いので「最上」と受け取られやすいのです。一番茶であること(葉の質)と、出回りが早いこと(新茶)は別の話です。
成分の数値は文部科学省「日本食品標準成分表」による。浸出液の値は成分表に併記された 浸出条件(玉露=茶10gを60℃の湯60mLに2.5分、せん茶=茶10gを90℃の湯430mLに1分)と セットでなければ比較できません。淹れる濃さが違えば、同じ茶でも数値は変わります。
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